医療機関の経営改善では、患者数を増やすことだけでなく、提供している診療に対して適正な診療報酬を算定できているかを確認することも重要です。その一つが施設基準の点検です。ただし、基準を満たすこと、地方厚生(支)局へ届け出ること、届出が受理されること、実際に診療報酬を算定できることは、それぞれ異なります。
施設基準の届出が「バリューアップ」につながる条件
施設基準とは、一定の診療報酬を算定するために医療機関が満たすべき人員配置、設備、研修、記録、運営体制などの条件です。必要な体制が既にあるにもかかわらず、届出や確認が不十分な場合には、適正な算定機会を見直す余地があります。一方、施設基準を満たすための採用・研修・設備投資に費用がかかることもあり、単純に「点数が高いほどよい」とは判断できません。
令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、施設基準の新設や要件変更がありました。具体的な届出様式や経過措置は、関東信越厚生局の令和8年度診療報酬改定案内など、所在地を管轄する地方厚生(支)局の最新資料で確認する必要があります。
施設基準の確認から収益検証までの8つの手順
1.現在の届出状況と算定実績を一覧にする
現在届け出ている施設基準と受理番号、算定開始日、直近のレセプトに含まれる算定項目を照合します。「届出済みだが算定していない」「算定しているが継続要件を点検していない」項目を分けます。現状を確認せず、追加の届出だけを先に進めないことが重要です。
2.診療内容と患者の必要性から候補項目を選ぶ
診療科や提供している医療、対象患者、診療体制に合う項目を抽出します。増収だけを目的に不要な診療行為を増やしてはいけません。診療報酬の算定要件と医学的な必要性に合致するものを対象にします。
3.最新の点数表・通知と施設基準を照合する
施設基準と個別患者の算定要件は別に確認します。診療報酬改定後は訂正通知や経過措置が追加されることもあります。例えば東海北陸厚生局の通知一覧には、令和8年度改定後の訂正や取扱いの更新が掲載されています。古い資料や民間の解説だけで判断しないようにします。
4.不足する要件と追加コストを明確にする
職員配置、資格、研修、専用設備、委員会、記録・掲示などについて、現在の充足状況を証拠資料とともに確認します。追加採用や設備費が必要な場合は、実現にかかる費用と期間を試算します。形式的に書類を整えるだけでなく、日常運用で基準を継続して満たせるか検討します。
5.届出書と添付資料を整え提出する
所管の地方厚生(支)局が示す最新様式を使い、必要な添付書類と提出方法を確認します。提出日・提出先・控えを記録し、不備照会に対応できる担当者を決めます。この段階の成果は「届出提出」であり、「受理」や「算定開始」ではありません。
6.受理状況と算定開始日を確認する
所管局の公表する施設基準の受理状況などで、受理の有無、受理番号、算定開始可能な日付を確認します。個別の算定開始時期は届出時期や適用ルールによって異なるため、一般化した日付を当てはめないようにします。受理後も算定要件を満たす診療が行われていることが前提です。
7.電子カルテ・レセプトと現場運用を点検する
医師、看護師、事務担当が記録・算定条件を共有し、必要な診療録や実施記録が残る運用にします。電子カルテや会計マスタの設定も確認します。届出を受理されても、算定対象患者がいなければ該当点数の収入は生じません。
8.実際の算定件数と費用を比較し効果を検証する
算定開始後、対象点数、算定件数、請求・査定状況、追加の人件費・設備費を月別に確認します。増収額の説明では、対象件数と診療日数、患者構成、算定開始時期を明記し、他の施策の影響と区別します。届出時の机上試算と実際の収益改善は別の数字です。
施設基準の点検でよくある3つの誤解
Q.届出を提出したら、すぐ算定できますか?
A.提出だけでは算定できると断定できません。受理状況、算定開始日、患者ごとの算定要件を確認する必要があります。
Q.算定できる点数が増えれば必ず利益も増えますか?
A.追加の人員、研修、設備、記録管理などに費用がかかる場合があります。点数と算定件数だけでなく、追加費用や継続管理の負担を合わせて判断します。
Q.一度届出を受理されれば確認は不要ですか?
A.いいえ。施設基準によっては継続的な要件充足や報告、変更時の届出等が必要です。改定に伴う再届出や経過措置も確認してください。
適正な算定体制の整備は、診療の質と両立させる
施設基準によるバリューアップは、新しい点数を探す作業だけではありません。適切な医療提供体制を整え、届出・受理・算定・収益検証までを一つずつ確認する経営管理です。Bridge Medical Consultingでは、医療機関の診療報酬分析、業務整備、経営改善、M&A前のバリューアップを支援しています。事業内容をご覧いただき、現状の点検や改善のご相談はお問い合わせフォームからお問い合わせください。
